漢方薬相談ブログ

紫雲膏など漢方薬の塗り薬は本当にアトピーのかゆみに使ってもよいのか?

紫雲膏など漢方薬の塗り薬は本当にアトピーのかゆみに使ってもよいのか?

  1. 紫雲膏はかゆみ止めにはならない
  2. その他の漢方の塗り薬
  3. 漢方は体質によって治療方法が変わる
  4. そもそも湿疹は過剰なアレルギー反応で起こっている
  5. ステロイドをうまく使いこなした方がましかも!?

ステロイド剤は、副作用も多く、塗る続けることに抵抗がある人が多いようです。

そこで、思いつくのが、漢方!

「そうだ、漢方薬は、生薬という自然のものを使っているから、漢方なら副作用を気にせずに塗り続けてもいい塗り薬があるんじゃないか」と。

でも、かなりひどいアトピーの人の治療経験や、漢方の修行時代に漢方のかゆみ止めの塗り薬をつくってきた経験からいくと、漢方でかゆみを止める塗り薬は、ないと思った方が良いと思います。

特に『紫雲膏』などが、痒み止めだと誤解している人は是非、読んでいただければと思います。

今回の話で、なぜ、漢方薬にかゆみを治す塗薬がないのかがわかります。

それどころか、そういった塗り薬を使うとアトピーが余計にひどくなるかもしれません。

世間では、漢方を医学理論的に考えずにテキトーに説明している先生やネット、AIの答えも多いので、今回のお話を読んでもらえれば、漢方の塗り薬を本当に使ってもよいのかどうかがわかるようになります。

紫雲膏はかゆみ止めにはならない

実は、僕も漢方の修行時代に生薬で、アトピーの人のかゆみ止めを作っていたり、自分でも生薬を取り寄せて、かゆみを止められそうな塗り薬を作ってみて、自分の周りの人達で試してみたこともあります。(販売はしていません)

今では、黒歴史です。

漢方のお店でも、たまに紫雲膏が、かゆみを止める塗り薬だと説明している先生がいますが、紫雲膏は、かゆみを止める塗り薬ではありません。

確かに医薬品としての紫雲膏の法規的な説明の中には、「かゆみ」を止めることも含まれています。

でも、これは、漢方薬を西洋医学的な医薬品として設定しないと法律上、売ることができないので、あくまで法律上の話であって、実際の治療とか効果とは関係ありません。

漢方薬は、東洋医学の医学理論で考えないといけないのです。

医薬品の法律上の建前の効果ではなく、紫雲膏の漢方的な本当の効果は、やけどを治すことが目的です。

その効果を更に細かく分析するために、紫雲膏の内容を詳しく見ていけばわかります。

漢方薬は、ステロイドのような西洋医学の有効成分が含まれているわけではないので、中の生薬構成をちゃんと理解していくことが治療につながっていきます。

紫雲膏の中身は、紫根、当帰、ごま油、豚脂、ミツロウです。

紫根は熱を冷ます効果があり、当帰は血行をよくして温める効果があります。

ごま油は、潤滑油的な効果があり、豚の油は、傷を保護する役割があります。

ミツロウも傷を保護し、肌をなめらかにします。

理論上の効果をみていると、アトピーのかゆみも治りそうですよね。

ここで、特に問題になりそうなのが当帰、ごま油、豚の脂、この中のごま油、豚の油など基本的にアレルギー反応を起こしやすいです。

この問題は、後で詳しく解説しています。

そして、当帰は温めて血行を良くします。

アトピーの方のかゆみは、漢方では、熱が原因のことが多く、漢方薬を選ぶ場合も、冷やす効果のものを使うことが多いので、血行が良くなる以前に温めると、かゆみに関わる熱が余計に勢いづいて、余計にひどくなります。

やけどに使う場合も、初期の熱が強い場合は、すぐに使わないほうがいいです。

本質からはずれますが、無理やりこじつければ、かゆみを止めることは可能かもしれないです。

しかし、紫雲膏の中身の効果を考えれば、明らかにかゆみ止めではなく、伝承通りのやけどの薬となります。

それも、傷の修復に重点が置かれています。

この中で役立ちそうなのは、紫根とミツロウくらいなのですが、それだったら、紫根とミツロウだけ塗ってみればいいのです。

ちなみに紫雲膏の添付文書には「かゆみ」に効果があるように書いてありますが、科学的に、なぜ、かゆみが止まるのかはわかっていません。

作用のメカニズムは不明となっているのです。

でも、かゆみにも使えるように書いてある。

この辺が、西洋医学的ルールの効果の説明の不思議なところです。

『実は根拠がないのに治るかのように説明している』

一見、科学的な西洋学でも、こんな感じのものが、他の薬でもあるので、漢方薬のものは、やっぱり『漢方のルール』で考えたほうがいいです。

そして、実は、紫雲膏に限らず、漢方生薬由来の塗り薬には決定的な問題があります。

その他の漢方の塗り薬

紫雲膏に限らず、生薬由来の塗り薬はあと、何種類かはあります。

中黄膏とか太乙膏とか、マニアックなところでは、蛇床子湯の煎じの液を塗るという方法もあったりします。

でも、どれも何が問題って、これらの塗り薬には、直接、ステロイドみたいなかゆみを止める成分が入っていないこと。

そして、果たして原因とあっているのかどうかがわからないこと。

湿疹には、いろいろな原因があります。

虫刺されや薬剤などのかぶれ、蕁麻疹、白癬菌などの菌、アトピーなどなど。

どれも、かゆみが起こるメカニズムが違ってきます。

アトピーに至っては、病院も全く原因がわかっていません。

白癬菌とアトピーなんて、白癬菌は皮膚上の菌との関連がありますが、アトピーは体内からの免疫の問題だったりするので、どれでも治せる塗薬は存在するわけがないのです。

ステロイドは、どんな原因であろうと、かゆみにつながる免疫自体を無理やり抑えるので、どんな人のかゆみも抑えることはできますが、そもそも免疫は、自分の体を守るバリアー機能なので、実は、手放しで抑えてよいというものでもありません。

紫雲膏やその他の漢方の塗り薬には、ステロイドのような無理やり、かゆみを抑える成分も効果もありませんので、塗ったところで、自分の原因とあっていなければ、何も効果を発揮しないのです

漢方は体質によって治療方法が変わる

漢方は、体質によって選ぶ漢方薬が変わります。

アトピーだったら、「一律、十味敗毒湯が効く」なんてことはありえません。

あれは、漢方の医学理論を知らない医者なんかが、マニュアルを見て出しているだけなので、あのようになっていますが、本来は、同じアトピーでも、体質が違えば、選ぶ漢方薬も変わります。

飲む漢方薬は、体質によって選ぶ漢方薬が変わるのに、塗り薬だったら、一律、一緒でいいと思いますか?

そんなわけがないですよね。

かゆみというのは、人によって、いろいろな原因があるのです。

例えば、太乙膏は、紫雲膏とは全然、違う生薬でつくられています。

つまり、作られている生薬が違うということは、当然、タイプによって使い分けなくちゃいけいことを示しています。

「乾燥してカサカサな湿疹」

「潤いがあるけど赤いプチッとした湿疹」

「ジュクジュクになっている湿疹」

「菌が原因の湿疹」

他にもいろいろな湿疹の方がいらっしゃいますが、漢方の塗り薬自体は、そんなにありません。

もっと、恐ろしいことに、漢方の本の中に『どんな体質(湿疹タイプ)にどんな塗り薬を使えばいいのか?』その理論を詳しく記しているものがないことです。

つまり、かゆみ止めとしては、あまり使ってこなかったと考えられます。

でも、実は、これも大きな問題ではありません。もっと大きな問題があります。

そもそも湿疹は過剰なアレルギー反応で起こっている

アトピーや蕁麻疹、菌による湿疹を例にみてみましょう。

そもそも、湿疹は、体の中から作られてきます。

「何かにかぶれた」などは外からの問題ですが、こんな時は、わざわざ、漢方の塗り薬を使わなくても、病院の塗り薬を使ったほうが、早くて効果的です。

体の中から、湿疹ができてくるということは、体内の状態によって、湿疹の種類も違うということです。

当然、治し方も違ってきます。

例えば、アトピーは、西洋医学的にも原因不明ではありますが、アトピーの人の皮膚は、とにかく『アレルギー反応が高すぎる』のです。

そこに当帰や豚の油、ごま油などのクセの強いものを塗ったらどうなるでしょう?

盛大にアレルギー反応を起こします。

仮に漢方の塗り薬に理論的にかゆみを止めてくれそうな成分があったとしても、使っている生薬そのものが刺激が強くクセのあるものなのです。

効果がどうのこう以前に、そのモノ自体にアレルギー反応を起こしてしまうのです。

要するに西洋医学は机上の空論的な理論頼みの傾向があるので、医薬品的に考えた時に「(理論上は)効果があるんだから塗ったらかゆみが止まりそう」と考えますが、生薬のモノ、そのものの性質などを考えたら、皮膚自体がアレルギー反応を起こしてしまうのですね。

これは、『薬湯』なんかも一緒で、アトピーの人は、かなりアレルギー反応が高い状態ですから、クセのある生薬を使った薬湯なんかでは、大体、アレルギー反応がよりひどくなるだけです。

ちなみに薬湯も、どんな体質の人にどんな薬湯を使えばいいのか、その根拠となる漢方の医学理論がありません。

薬湯を勧められている人は、ちゃんと古来からの理論があるのか聞いたほうがいいです。

ついでに、その先生が体質を分析して漢方薬を選んでいるかもチェックしましょう。

体質から漢方薬を選ぶという基本中の基本もできていないのなら、まず、薬湯に対する根拠を持っているはずがありませんので。

ステロイドをうまく使いこなした方がましかも!?

要するに湿疹は、虫刺されやかぶれでない場合は、体の中の問題であることが多いのです。

だったら、急がば回れで、体の中から治した方がてっとり早いのです。

自分のアトピーには、「どんな生薬が合うのか?」「その生薬でアレルギー反応が起こるのか?起こらないのか?」

これらがわかっていない、よくわからない漢方的な塗り薬を使うのであれば、一定期間だけ、目的をもって計画的に使うつもりで、うまくステロイドを使いこなしたほうが、まだ良いのではないかと思います。

漢方薬の塗り薬なら、副作用なく、かゆみが止まるというのは、効果を詳しく考えてみたら、残念ながら『あまりにご都合主義な幻想』となります。

そこには理論も根拠もありません。

医療は常に深く考えなきゃダメなんですね。

当店では、人それぞれの体質を分析して、その人独自の原因に合わせて漢方薬をお選びします。

ご希望の方は、概要欄にネット相談や店頭相談の予約カレンダーを貼ってありますので、ご相談ください。

あなたの現在の体質や原因を判断して、治療方針をご提案いたします。

相談は無料です。

●アトピーや蕁麻疹で、お悩みの方は、こちらの「漢方無料相談」から送信してください。

●お問い合わせは、こちらから送信してください。

●店頭相談のご予約は、こちらから、ご予約ください。(店頭も初回の相談は無料です)

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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ ツムラ医療用漢方薬添付文書
◯ コタロー添付文書集
◯ クラシエ医療用漢方添付文書
◯ 漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ 平成薬証論:メディカルユーコン
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅠ:薬局新聞社刊
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅡ:薬局新聞社刊
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅢ:薬局新聞社刊

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

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